コンビニ妖怪現る。

 先日コンビニで考え事をしながら買い物をしていたら、無意識のうちに、購入前のチョコレートをコートのポケットに入れようとしていた。我に返ったが、時既に遅し。チョコレートは主が如く、ポケット内で神々しく鎮座ましましていた。

 問題は、ここからである。僕はその時、非常に焦っていた。焦りすぎていたのかもしれません。僕が仙台でも有数の善良な市民であり、決して万引きを働く人間ではないことを、監視カメラを通して僕をモニタリングしている店員に伝え、誤解を解かなければと、強く強く思った。そこで僕は急いでチョコレートをポケットから取り出し、ポケットの内側をひらひらさせながら、コンビニ内を周回することに全力をつくした。

 結果、コンビニ内で一番怪しい人間が誕生した。万引きを働くつもりがなく、成し遂げる勇気もない人間であることを相手に如何にして伝えるか。そのことだけを考えて、行動したのにもかかわらずである。

 このように、自分を必要以上に良く見せようとして、失敗することが多々ある。コンビニでの失敗の他にも、意中の相手に身の丈に合わないクールな印象を残そうと画策し、失敗してしまったことが幾度かある。例えば、意中の相手と会話をする際のことだ。せっかくの貴重な機会なのだから、ただ楽しくお話することだけに終始すればいいものの、わざとそっけない態度をとってクールな自分を演じてしまう。しかし、そんな意図が相手に伝わるわけもなく、ただただ、悪い印象を残して終わる。

 どんな状況下でも等身大の自分を見せて、相手に自分の思いをしっかりと伝えること。それが今までの人生で学んだ他者とのコミュニケーションにおけるコツである。従って件のコンビニ事件の際もコンビニ内を怪しく周回する前に、その場で叫べばよかったのかもしれない。「僕は万引きしません!!」と。明日以降、突然コンビニで叫ぶ僕を見てもそっとしておいて欲しい。コミュニケーションの気苦労は絶えない。

 

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