君の名前で僕を呼んで

 

『Call Me By Your Name』(邦題:『君の名前で僕を読んで』)

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 この映画にはFrank Oceanの『Self Control』 の歌詞を初めて読んだ時とおんなじ衝撃があった。

 

Self Control

Self Control

  • Frank Ocean
  • Pop
  • USD 1.29
  • provided courtesy of iTunes

 

 この曲は「I'll be the boyfriend...」という歌いだしで始まり、夏のプールサイドでのひと時が歌われている。Frank Oceanの歌詞から連想される「暑い夏の夜にノートに綴ったあてもない思い」はこの映画のテーマにも共通していると思う。(奇しくもこの映画でもよく水辺で体を横たえるシーンがよく登場する。)

 『Call Me By Your Name』は、夏のイタリアで主人公エリオと年上の大学院生のオリヴァーのラブストーリーが描かれている。太陽が燦々と輝く中、華奢で美しい青年エリオがラコステのポロシャツを身にまとい、川辺で遊んだり果実をほお張ったりする。そして時に感情を爆発させたりする。彼の言動の一つ一つがとても魅力的で映画を見ている間、目が離せない。(以前のBlogでも書いたが僕は、登場人物が食べ物をおいしそうにほお張る描写がどうやら好きみたいだ。)

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 またエリオやオリヴァーを始め、この映画の登場人物達は皆、教養がありユーモラスなので、彼らの会話はとても高度で面白い。そしてこの何気ない会話のやりとりが後のストーリーに繋がっていることが多々あり、非常に緻密に作られている映画だなと思った。

 これだけでも充分楽しめる映画なのだが、中でも僕が面白いなと感じたのは、主人公の家族やオリヴァーが労働にほとんど従事していないところだ。エリオの父親が大学教授という職業柄、文学の研究に励んでいる姿は要所要所で描かれているのだが、それを除けば彼らはいっさい働いていない。炊事、洗濯、掃除、そして自転車の修理にいたるまで雑用の全てを使用人が行っていて、その代わりに彼らは音楽を奏で、ハイデガーを読み、深い教養をもって討論し、酒を飲み、ディスコで踊る。(全然関係ないけど、オリヴァーのダンスがあまりにオッさん風のダンスだったので少し笑ってしまった。)

 村上春樹のデビュー作である『風の歌を聴け』という作品のある一節を思い出したので引用する。

もしあなたが芸術や文学を求めているのならギリシャ人の書いたものを読めばいい。真の芸術が生み出されるためには奴隷制度が必要不可欠だからだ。古代ギリシャ人がそうであったように、奴隷が畑を耕し、食事を作り、舟を漕ぎ、そしてその間に市民は地中海の太陽の下で詩作に耽り、数学に取り組む。芸術とはそういったものだ。

 彼らはまさに当時のギリシャ人そのもので、彼らの生活は芸術そのものだ。職場の上司にハラスメントをされたりだとか、週末に便器の掃除をするといった、ふだん僕らがうんざりするほど味わっている生活の“みじめな所”が殆ど描かれていないのだ。だからこの映画が作品全体でとても不思議な、“芸術的”な雰囲気がする。

 ただ、この映画で描かれる性欲や食欲や自然に囲まれて暮らす喜びは、僕らがふだん嫌というほど向きあっているものだ。映画全体が穢れのない美しい雰囲気に包まれているのだけれど、同時に親近感も感じてしまう。なんだかギリギリの綱渡りをする曲芸師みたいな映画だ。

 またこの映画では、二人の愛や性欲が、食欲を象徴する果実や、川辺などの自然によく結びつけられて描かれている。誰かを肉体的にも精神的にも必要とする事が、腹が減ることや夏の暑い日に川に飛び込みたくなることとなんら変わりなくて、誰にとっても当たり前の欲望なんだとじんわりと感じることができる。 

 冒頭に言ったように、この映画には「夏の夜にこっそりノートに綴ったあてもない思い」を、痛みを伴いながらも肯定してくれるシーンやセリフが沢山沢山ある。是非見ることをオススメしたい!

 

  最後にこの映画とは直接関係はないのでけれど、映画を見終わった時に友人のあるツイートを思い出した。 少し迷ったけど載せる。

 

  いろんな人の感想が聞いてみたい。